ラサの華 ~青花本金彩梵字薔薇文茶壷~

魔法のランプのようなフォルム、青と白の水玉模様、
そして「ラサの華」という名前が特徴的なこの茶壷。
実はこの作品、斬新なアイデアと超絶技巧が融合した一品です。

三多(桃・柘榴・佛手柑)や蝙蝠、金魚など、
中国の茶器には富や幸いを願う吉祥柄が描かれることが多いです。
そして、干支もまた、一年の幸を願うモチーフとして人気があります。

しかし、おめでたいはずの干支の中でも例外的に不人気なのが「ヘビ」。
ニョロニョロ、ウネウネとした姿は、どうしてもグロテスクになってしまいます。
かといって「巳」の文字を書き連ねていくのもいただけません。

「ヘビをどうしよう」「どうやって描こう」
そんな思案のさなかに飛び出したのが「梵字ってどうですか?」という一言。
プロが12年に一回悩む問題を一挙解決させたこのアイデア。
提案したのはなんと、20代の日本人女性だというから驚きです。

景徳鎮では昔から梵字・チベット文字などをまとめて藏文と呼び、
回教徒の様々な文字については回文と呼び、
それぞれ描き続けてきたこともあって
それらの文字で器をいろどるデザインも得意としてきたそうです。
ですから、この「梵字で干支」というアイデアも喜んで受け入れられ、
かくして、この「ラサの華」という作品ができあがりました。

 

さて、さきに「巳年をどうするか」というところからアイデアが生まれたと書きましたが、
この茶壷には、巳年だけでなく、すべての干支を表す梵字が描かれております。
そして、それぞれの梵字には、梵字十二支における守り本尊が当てはめられています。
(文字の数が8つなのは、丑寅・辰巳・未申・戌亥がそれぞれ1字で表されているからです)
なぜこのようなかたちになったかと言いますと、
それは、持ち主の方ひとりだけではなく、ともにお茶を楽しむ周りの方々や、
大切な人たちの幸せも祈ってほしいという想いがこめられているからです。

お買い求めいただいたお客様だけでなく、
周りの人たちの幸を想う祈りをこめた作品となりました。